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三島由紀夫の幻の試作本(ノーベル版)「豊饒の海 春の雪」Yukio Mishima Rare Book Spring Snow Called “Nobel Version”

2020 年 5 月 1 日 | カテゴリー : 文学・人文

小宮山書店 中二階より 前回の異装本に続きまして今回は希少な三島由紀夫の試作本の紹介です。

本の詳細とご注文はこちらからどうぞ。

いまは本の校正や装丁などのデザインの殆どがパソコンで完結する時代ですが、昭和の中期までは全てが手作業で行われていました。昔は古書店などで「束見本」と呼ばれる本の中身が白紙で外見が書店に並んでいる本と同じ装丁の本を希に見かけました。これは出版社が本の出来上がりを見るために、外見だけを実際に使う紙と印刷で見本として作っていた本です。中身は白紙ですが見返し・本文・扉などは実際に使う紙と同じ物をを用いて、さらにページ数まで揃えて造本する場合が殆どで、それが一冊の本を作るのにこれほどまでに実物を把握するための手間をかけている証でもあります。そして本来は市場には出てこない本です。一方試作本(試作版)とは「束見本」より更に進んで、ほぼ出版の最終段階の場合が多く中身の印刷もしっかりと作られています。そして重要なのが「試作本」は「束見本」より遥かに市場には出てこない貴重な本なのです。当時はこの試作本で複数の編集者や識者に最終的な校正をお願いしたという話もありますが、それを裏付ける資料は見つかりませんでした。

今回紹介します試作本は三島由紀夫の最後の長編となりました四部作 豊饒の海・第一作目の「春の雪」です。通常版の出版年は昭和44年の発行ですが試作本の奥付には昭和43年10月30日の印刷がされています。手元の資料によりますとこの試作本の由来は、当時日本人文学者が初めてノーベル文学賞を受賞するのではないかという噂が大きくなるなかで、川端康成か三島由紀夫が受賞すると思われていました。そんな世論のなか出版社が先読みをして300部ほど「春の雪」を試作したのがこの本です。帯の試作も作られ「ノーベル賞文学賞受賞」と印刷されていたと言います。しかし賞は川端康成が受賞することとなりこの本は全て廃棄されました。しかし出版元に廃棄されずに少数残っていたものが発見され、試作本「春の雪」が世に知られる事となります。事の経緯からこの本の通称をノーベル版と呼ぶようになったと聞きます。当店では三島由紀夫のレアなものに関しましてはかなり積極的に集めておりますが、それでもこの試作本「春の雪」の入荷は実に7年ぶりです。今後の入荷は予想できない本なので興味のある方は是非ご注文をお待ちしております。次は10年後かもしれません!

他に「春の雪」関連のものが多数ございますので、宜しければこちらもどうぞ。