いつも書店、ギャラリーにご来店いただき誠にありがとうございます。
このたび、3階クイアセクションにて、歴史的にも貴重な会員制ゲイ同人誌『アドニス』が新たに入荷いたしました。
『アドニス』は、日本で初めての会員制ゲイ同人誌として、1952年に「アドニス会」によって創刊されました。
1962年、警察の取り締まりにより惜しくも廃刊となるまでに全63号が刊行され、小説・詩・エッセイ・イラストなど、同性愛(ゲイ)をテーマに多彩な表現を生み出しました。
作家・伏見憲明氏による「アドニス探究」(『彷書月刊』2006年3月号に掲載)によると、本誌の創刊は、当時『あまとりあ』という雑誌を編集していた高橋鐡氏の周辺人物たちによるものであり、編集スタッフは途中で交代もあったと推察されています。
1959年のNo.47にある会員総覧では、会員数361番まで記載されています。
三島由紀夫も熱心な読者であり、別冊小説集『アポロ』には「榊山保」名義で短編『愛の処刑』を寄稿。また、中井英夫の代表作『虚無への供物』も、『アドニス』で初めて発表された作品として知られています。
▲別冊小説集『アポロ』*現在品切れ
見どころ①|会員による等身大のコメント欄「FORUM」や出会いを求める「ECHO」と会員紹介ページ
『アドニス』への感想や、エッセイまで自由に書かれる「FORUM」。
戦時中の学徒動員で出会った年下の少年工との淡い恋、結婚適齢期とされる時期での社会的な圧力への葛藤、三島由紀夫から受けた影響など、内容は多岐にわたります。
ゲイという言葉すら誌面上ではほとんど使われていない時代ですが、ある種の秘密を共有するように、千差万別の物語が綴られています。
また、出会いの場を提供する「ECHO」や、会員紹介のページ作りは、のちの商業ゲイ雑誌にも影響を与えました。
見どころ②|知的好奇心を刺激する教養と学術的考察
同性愛をめぐる当時の性科学の研究成果や、古代ローマ帝国における同性愛の史実など、学術的視点からの考察も多く含まれています。
ドイツの弁護士カール・ハインリッヒ・ウルリッヒが提唱した「ウルニング(Urning)」という概念を紹介した、鳴門渦潮氏のエッセイなども掲載。
同性愛に対する先駆的な知見が詰まっています。
見どころ③|ビジュアルの魅力:写真とイラスト
誌面には、当時としては貴重なイメージ写真やイラストも多数掲載。
のちにゲイ雑誌『薔薇族』や『さぶ』で活躍するイラストレーター・三島剛の、根本幸雄名義時代の作品も見ることができます。
また、時代背景を反映したフェティッシュな写真も収録されており、当時の表現の自由や抑圧とのせめぎ合いが感じ取れます。
わずか月に一度あるかないかの雑誌や文通を通じて交流する―『アドニス』には、書物が持つ根源的な力と、文化の拠点としての意義が詰まっています。
歴史的にも価値のある本誌を、ぜひ店頭にてご覧ください。
*既に在庫切れの号数もございます。
*近日中に関西の会員制同人誌「同姓」等もご紹介予定です。
*”ゲイ同人誌”という表現は『アドニス』誌上では使用されておりません。
また、3Fクイアコーナーには現在、三島剛や平野剛、内藤ルネ、月岡月光、水影鐐司( 清原宗明、御楯巧蔵 ) 、甲秀樹 といった作家の原画が多数入荷しております。
オンラインサイトには掲載されておりませんので、店頭またはEメールにてお問い合わせください。
小宮山書店では皆様の大切な書籍を、一冊一冊丁寧に査定しております。
クイアコーナーの買取も強化しておりますので、国内外の書籍・写真集・イラストなどお気軽にご相談くださいませ。